ないでは、いられなくなった。
 パイ軍曹は、目をつぶり、大きな口をひらき、林檎をがぶりとやろうとした。これをみていたピート一等兵も、もう、たまらなくなった。
「あ、軍曹どの。お待ちなさい」
「なんだ、なぜ、とめる」
「その林檎は、どうも、たいへんあやしいですよ。さっき、自分がたべたとき、へんな味だと思いましたが、ああ、あいた、あいた、あいたたたッ」
 ピート一等兵は、とつぜん顔をしかめ、自分の腹をおさえて、くるしみだした。
「おい、どうしたピート。しっかりしろ」
「あ、あいた、ああいたい。軍曹どの、その林檎を食べてはいけません。その林檎の中には、毒が入っています。うわーッ、いたい」
 ピート一等兵が、しきりにくるしがるので、パイ軍曹は、心配になった。
「毒がはいっているって? ほんとかなあ」
「ほんとです。毒のある林檎であります。軍曹どの、自分はもうさっきの林檎の毒にあたってとても助かりません。ですから、そのついでに、軍曹どののもっておられる林檎も、自分が食べてしまいましょう。そうでないと、自分が死んだのち、軍曹どのが、この林檎を召し上るようなことになると、軍曹どのもまた一命を……」

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