っと気の毒やら、おかしいやらであった。だが、笑うわけにも、いかなかった。
 そこで、彼は、軍曹にこえをかけた。
「軍曹どの、このままで、じっとしていては、われわれは、死ぬよりほかありません。ですから、思い切って、この地底戦車をうごかして、ニューヨークまで、かえっては、どうでありますか」
 パイ軍曹は、顔をあげた。そして、あきれがおで、
「ばか。ニューヨークまで、こんな地底戦車にのってかえれるものか」
「しかし、軍曹どの。われわれ軍人は、常にそれくらいの元気は、もっていなければならぬと思うのであります」
「それは、わかっとる。しかし、ニューヨークまでかえるには、何ヶ月かかるかわからない。その間重油をどうするんだ。また、われわれは、なにを食べて、その何ヶ月かを生きていればいいんだ」
 パイ軍曹は、こうなると、ますますひかんしていった。
「なァに、軍曹どの、なにか考えれば、どうにかなりますよ」
 と、ピート一等兵は、ますます元気なこえでいった。くいかけの林檎一個が、たいへんな力を、彼にあたえたのだ。
「どうかなると、口でいうだけでは、どうもならん」
「だめです。軍曹どのは、やってみないうちか
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