ッ、追跡だッ」
壮烈な海上追跡が始った。逃げる汽艇は東京の方へ進んでゆく様子に見えた。しかし課長がこんなこともあろうかと選定して置いた快速のモーターボートは、遂《つい》に目指す汽艇へ追いついた。
「こらッ!」
大江山課長は真先《まっさき》に向うの汽艇へ飛び移った。つづいて部下もバラバラと飛び乗った。狭い汽艇だから、艇内は直ぐに残《のこ》る隈《くま》なく探された。しかし肝心の機関長の姿もなければ、無論岩の姿も発見されなかった。係官一同はあまりの不思議に呆然《ぼうぜん》と立ちつくした。そんな筈はない。
その夜更《よふ》け。ここは東京の月島という埋立地の海岸に、太った男が、水のボトボト滴《た》れる大きな潜水服を両手に抱えて立っていた。
折からの月明《つきあかり》に顔を見ると、グリグリ眼の大辻老だった。一体今時分何をしているのだろう?
海底に消えた地底機関車はどうした?
機関長に化けていた強盗紳士岩は、どうして逃げ、どこへもぐりこんでいるだろうか? 少年探偵三吉はどこへ行ったか?
怪盗の秘密室
水底に沈んだ地底機関車を、あとから潜水夫を入れて探してみると、奇怪にも影
前へ
次へ
全56ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング