飛行機が飛び交い、水中には水上署が秘蔵している潜航艇が出動した。空、陸、海上、海底の四段構えで、それこそ針でついたほどの隙もなく二重三重に守られた。
 大江山捜査課長は部下を率いて、横浜埠頭《よこはまふとう》へ出張した。
「フネデトウキョウヘカエッテクルゾ……東京へ帰るというからには、芝浦へ着くのか、それとも横浜に着いて東京へ入るのか」
 課長は大いに迷った。しかし愚図愚図《ぐずぐず》することは許されない。係員を半分にわけ、一隊は芝浦港へ、一隊は横浜港へ。そして課長自身は信ずるところあって横浜へ――。
 さて今や、当日たった一|艘《そう》入港《にゅうこう》する外国帰りの汽船コレヤ丸が港外に巨影を現した。


   コレヤ丸入港


 米国《べいこく》がえりのコレヤ丸は、疲れ切った船体を、港内の四|号《ごう》錨地《びょうち》へ停めた。
 停まるを遅しと一艘のモーターボートが横づけになった。ドヤドヤと梯子《はしご》を上る一行の先頭に、大江山捜査課長の姿があった。
「やあ御苦労さまです」と船長が迎えた。
「無線で命令したことは御承知でしょうな」と捜査課長は鋭くいった。
「はい。船客は一人も降
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