したことは極力《きょくりょく》秘密さ。そう放送すれば岩は諦めるだろうと思ったのだ。……俺はも少しでマンマと百万弗を握り損《そこな》うところだった。
 警察にしちゃ、鮮《あざや》かすぎる手だ。そこで俺は気がつくべきだった」
「どう気がつくべきだったんです」
「爆弾に手首を吹き飛ばされ、痛いッと叫んだ瞬間に、俺は気がついたのだ。恐るべき俺の敵が、日本に帰ってきているということを――」
 そういって岩はフッと押し黙った。怪盗岩が恐れる敵とは、そも何者か?


   岩は何をする?


 警視庁では千葉総監を囲み、捜査係官の非常会議が始っていた。遠く横浜警察の署長までが参加していた。
「では始めます」そういったのは大江山捜査課長だった。「岩はこれから何をするか、それについて皆さんの御意見を伺《うかが》いたいものです。……いままでに岩のやったことを考えてみますと、第一には地底機関車を奪い取った事件です。これが岩の仕業《しわざ》であることは、証拠の上でハッキリいえます。第二には、正金銀行から百万弗の金貨を盗んだ事件です。
 私達は金庫の前面ばかりを注意していましたが、岩の方はその裏を掻《か》いて、
前へ 次へ
全56ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング