て押し戴《いただ》き、
「そういうこととは存ぜず、さきほどから失礼いたしました。今更ながら、博士の学問の深く且《か》つ大きいことについては驚嘆《きょうたん》の外《ほか》ありません。どうかわが国を救っていただきたい。九十九|路《ろ》は尽《つ》き、ただ残る一路は金博士に依存する次第である。金博士よ、乞う自愛せられよ」
有頂天《うちょうてん》になったネルスキー特使は、まことに現金なごま[#「ごま」に傍点]をする。
「で、博士。それなら実際問題として、どういうことをなされます。これは宰相に報告する貴重なる材料となりますので、ぜひお話し置き願いまする」
「さっきから聞いていれば、わしが一口|喋《しゃべ》る間にお前さんは二十口も喋るね。北国人《ほっこくじん》には珍しいお喋りじゃ」
「これは御挨拶《ごあいさつ》です」
「まず何よりも決めて貰いたいのは報酬《ほうしゅう》問題じゃ。これが成功の暁には何を呉れますかな」
「ああ報酬ですか。これは申し遅れて、まことに申訳なし。わが宰相から委任されている範囲内でもって、如何様なる巨額の報酬でもお支払いいたす。百ルーブル紙幣を、博士の目の高さまで積んでもよろし
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