所へ知らせてやるよ」
博士はこの約束を果した。
その日のお昼のすこし前、帆村が旗田邸に居ると、事務所から電話がかかって来た。出てみると、八雲千鳥が当惑し切ったという旨で、
「さっきお電話が先生にありましたんですけれど、いくらお聞きしても自分のお名前を仰有いませんの、そしてただ先生に、“鼠も心臓麻痺じゃ”と、それだけを伝えてくれと仰有いましたんですけれど、何のことだかさっぱり分りません。ひょっとしたらその方は気が変ではないかと……」
「いや、分ったよ、八雲君。それは素晴らしい報告だ。鼠も心臓麻痺で死んだとね。いや全くそれは素晴らしい報告だ」
八雲千鳥は、帆村先生にも気が変になることが移ったのではないかと思い心臓をどきどきさせたことだった。
再出発
その日の午後になって、旗田邸へ検察係官は参集した。その朝の古堀裁判医の報告によって、新たな方向へ捜査を発展させる必要が出来たからである。
帆村荘六も、やはり案内を受けたので、定刻になって旗田邸へ入った。
長谷戸検事が、いつものように捜査進行の中心にいた。
顔触れの揃ったのを知ると、長谷戸検事は煙草の火を消して、別室から事
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