いていて、妹はちゃんと家に居た。それからは外へ出なかった、その夜は……。妹はピストルには無関係だ」
「それはいい証言だ。明日大寺警部には是非聴いて貰って置こう。先生は三津子さんが撃ちかねないものと考えているようだから」
「とんでもない話だ。うちの妹はピストルの撃ち方だって知らないんだ」
素晴しき報告
その翌日午前十時に、裁判医古堀博士の報告が行われた。場所は捜査課の会議室で、帆村荘六もその席に列していた。
「昨日もちょっと申したように、旗田鶴彌の推定死亡時刻は前夜の午後十一時半前後。死因は心臓麻痺であり、ピストルの弾丸は彼が息を引取ってから後に撃ち込まれたものである。これは始めから分っていた。ピストルで殺したにしては、創口からの出血量が少かったからねえ。それから心臓麻痺の問題であるが、これは剖検で確認した。しかし当人の生前の健康状態は頗る良好で、年齢の割に溌剌としていて、心臓麻痺を起しやすい症状にあったとは思われない……」
緊張して聞いていた一座の中に、帆村の唇が笑いを含んでぐっと曲った。それは彼が、「それ見たか」というときにする癖だった。
「そこで心臓麻痺の原因がどこに
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