が解けようとしたときに、突然裁判医からのあの電話であった。折角ピストルを土台として積みあげたものが、この電話によって一瞬の間にがらがらと崩れてしまったのである。なんということだ。無駄骨と知らずに、ここまで一所懸命に追って来たのである。
長谷戸検事は、無言で椅子の背を抱えている。今朝からの疲労が一度に出てきたという顔つきであった。ピストルを発見した殊勲の佐々部長刑事は、もっとがっかりした顔になって、開け放しになった口を閉じようともしない。検事の隣の椅子では、大寺主任警部が、これは又今にも怒鳴りそうなおっかない顔であたりを見廻わしている。帆村探偵は、部屋の隅っこで、静かに煙草の煙を天井へふきあげている。
「今日はもう訊問はよそうや。訊問をやっても仕様がない」
長谷戸検事が突然椅子からぴょんと躍り上るようにして立って、そういった。皆は一斉に検事の顔を見た。
「ねえ、そうじゃないか。ピストルで撃たれて死んだのではなく心臓麻痺で死んだというが、それならそれで、裁判医から詳しく説明を受けないことには、われわれには一向に納得が行かない。そして捜査方針を改めて建直さにゃならない。だから訊問も捜査も
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