た」
「もうよろしい、そのへんで……」
と、帆村は芝山の陳述を押し止めた。そして一先ず元の部屋へ引取らせた。
芝山が退場すると、長谷戸検事以下の全員が帆村探偵の方を向いて、破顔爆笑した。芝山に小林との情事をぶちまけさせたのが、面白かったのであろう。帆村はわざとしかつめらしい顔で一同の方にお辞儀をした。
そして口上を述べた。
「今ごらんに入れたのが第二幕でございました」
検事がにこにこ顔で、軽く拍手した。検事の屈託のない人柄を、帆村は以前から尊敬していたので、もう一つお辞儀をした。
「帆村君の見せてくれるものは、これで終ったのかね」
と大寺警部が聞いた。警部もいつになく弛んだ顔をしている。
すると帆村が、警部の方へ向いていった。
「いや、まだ第三幕以下がございます。しかし第三幕は、僕が出しません。そのうちに他の人が、その幕を揚げてくれる筈でございます。暫くどうぞお待ち下さい」
そういっているとき、奥から警官が急いで入って来た。
「只今、裁判医の古堀博士からお電話でございまして、旗田鶴彌の解剖は終りましたそうで……」それから警官はメモの紙片の上を見ながら「旗田鶴彌の死亡時間は
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