寝ていましたから……」
 芝山は遂にたいへんな[#「たいへんな」は底本では「たいへん」]ことを告白した。

   意外又意外

「すると、君は昨日夕方自宅へ帰って自宅に朝まで寝ていたというのは一体どうしたんですか」
 と、帆村は冷然として芝山に訊問を続ける。
「あれはわしが家内にそういって、嘘をいわせたんです。でないと、わしは御主人殺しの関係者と睨まれて、うちはたいへんなことになるから、わしは自宅に居たことにするんだぞと家内を説き伏せたわけです」
「それを妻君にいったのはいつですか」
「今朝のことです。旦那様がいけないと分ってから後で、ちょっと家へ帰って参ったんです」
 芝山の言葉つきが、始めは爺むさくそして要点の話になるとすっかりすっきりした言葉になることを、帆村は興深く聞きとめていた。それは兎に角、これで芝山宇平と小林トメとの秘密な情交関係が分ってしまった。芝山は小林を救うために、小林のアリバイを証明しなければならなくなったのだ。そのために五十男は全身びっしょり汗をかいて告白をしたが、小林トメはまだそんな秘事が洩れたとは知らないで居る。それと分ったときに、この家政婦は一体どんな顔を
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