……そのピストルが隠してあったところが、ちょっと問題なんだがねえ。はっきりいうと、それは家政婦の小林さんの部屋なんだ」
「えっ、……」
 明らかに芝山は衝動を受けた様子。
「小林さんの部屋を入って右手に二畳の間がある。そこに茶箪笥があって、その上に花活が載っている。花は活けてない。水も殆んど入っていない。その花活の中に問題のピストルが、銃口を下にして隠してあったんだ。いいですか」
「へえへえ」
 芝山の眼は落着を失った。
「さあ、そこであなたに特に知らせて置くわけだが、そのピストルは小林さんが使って主人を撃ち殺し、そのあとで自分の部屋の花活の中に隠した――という嫌疑が小林さんに懸っているんだ」
「それは人違いです。おトメさんはそんな大それたことをするような女じゃあない」
 芝山は躍気になって否定した。
「だが、小林さんには、その嫌疑を否定する証拠がないんだ。つまり、自分がそのピストルを使わなかったことを証明することが出来ないんだ。また自分がピストルをその夜花活に隠さなかったことも証明できない。小林さんは今、あっちの部屋で気が変になったようになっている」
「残酷だ。おトメさんは人殺しをす
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