そうじゃないでしょう。亀之介は女に不自由するような人じゃないですからね」
警部は、首を振った。
「しかし、あの兄にしてこの弟あり、ではないかねえ」
「兄は三津子のような若い美人を相手にしています、弟だって三津子ぐらいのところならいいでしょうが、まさかあの大年増の尻を追うことはないでしょう」
「まあ、もうすこし帆村君の演出を拝見していよう」
「そんなことよりも、ピストルの方を早く片づけたいものですがねえ」
「だから、今土居三津子がここへ来るじゃないか」
そこへ芝山宇平が巡査に連れられておずおずと入って来た。そして亀之介がさっきまで座っていた椅子に腰を下ろした。
「へえ、何の御用でがすか」
ぺこんと頭を下げる。五十歳をちょっと過ぎたというが、五分ぐらいに刈った短い頭髪が、額の両側のところですこし薄くなっている。血色のいい顔、大きな体の持主だ。
「これは特別に君の耳に入れて置くんですがねえ」と帆村が手帳を拡げて、仔細あり気に芝山の顔を見た。
「実は、ピストルが見つかったんです、一発だけ撃ってあるピストルがねえ」
「はあ。わしはピストルは見たこともねえでがす」
「いや、君のことじゃない。
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