ついては、もっと徹底的に調査させましょう」
「ぜひそうして貰いたいね、重要な問題だからねえ」
 検事は熱心な語調でそういった。
「それで、次はどうしますか」
 警部が帳面をひろげて、次の段取にとりかかった。
「雇人の取調べを一通りやりあげたいね。あとは誰と誰だったかね」
「爺やの芝山宇平とお手伝いのお末です」
「じゃあ芝山の方から始めよう」
 警部が手をあげて、警官に芝山をここへ連れて来るようにいいつけた。
 間もなく芝山はこの広間へ入って来た。しきりに頭をぺこぺこ下げて大いに恐れ入っているという風を示した。彼は爺やらしい汚れたカーキー服を着て、帽子を手に持っていた。力士のような良い体格の男であった。
「君が芝山宇平さんか」
「はい。さようでございます」
「君は通勤しているのかね」
「はい。さようでございます」
「昨夜は、君はどこにどうしていたかね」
「はあ。家に居りました。夕方六時にお邸からいつものようにお暇を頂きまして、家へ帰りついたのが六時半頃、それから本を読みまして十時頃に寝てしまいました。そして今朝はいつものように六時頃お邸へ参りました」
「それは確かかね」
「はい、確かでご
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