してもらわねば、これじゃたまりませんよ」
「どうもこれは……」
と、警部は、妙なところから吹きだした風に微笑した。
「結局、すべての事件は完全に且つ速やかに解決せられなければ、民衆の迷惑は大きいわけですからね」
「それはそうだ」
警部は帆村の唱える予算増加案に礼をいおうと思っているうちに、話がまた変な見当へ向きをかえたので、こんな相手とこれ以上|交際《つきあ》っているのがいやになった。
「おい帆村君。外にもう君独特の発見はないのかい」
見るに見かねたように、長谷戸検事が声をかけた。すると帆村は、検事の方へ身体を向け直して、片手をあげた。
「もうよしましょう。こっちから一々取上げてゆくと、お邪魔ばかりをするようですから。……ああ、もう一つだけ、おせっかいに取上げさせて頂きますかな。それは屍体が頭をもたせかけていた小卓子の上に並んでいるものの中に缶詰がありますね。これはちょっと面白いと思うのですがね」
帆村がそういうと、とたんに警部は小卓子の前へ突進した。
「これは確かに面白い。私も最初から目をつけていた」
と、警部は空缶を指した。帆村は微笑した。
「で、警部さんは、どこに興味を
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