く友人の土居記者に会わす顔があった。それにしても帆村の殊勲であるところの、例の灰皿の上の黒ずんだ灰に目をつけた一事は後で大いに検事からほめられたが、そのとき帆村は、
「いや、違うのです、違うのです」
と強く打消した。そしてこんな打明け話をして一同を失笑させた。
「もし殊勲者がありとすれば、それはうちの事務所の助手八雲千鳥嬢ですよ。事件捜査中あれが『先生がお残しになった灰皿の中の紙の焼け灰から、先生がそこにいらっしゃることが分ったんです。なぜってその焼け灰の上に、鉛筆でお書きになった先生の御伝言が光っていましたから、それを読んでみると、先生がそこへ行っていらっしゃることが分ったんです――』八雲嬢はそういったんです。実は僕が事務所を出るとき、八雲君はまだ出勤して居らず、そこで伝言書を鉛筆で書いたんですが、どこまであのお嬢さんが気がつくかと思い、僕はそれをわざと火をつけて灰にし、僕の机の灰皿の上にそっと載せておいたのです。ところが八雲嬢は見事にそれを見つけて判読したというわけです。――僕は感心のあまり、灰皿の中の黒ずんだ灰に強い印象を植えつけられ、さてこそ例の小卓子の上の灰皿の中にある黒ず
前へ
次へ
全157ページ中155ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング