ありませんか」
「うむ、それはいいだろう。おい君――」
と検事は、部下のひとりを呼んで、電話をかけさせた。
その部下は、間もなく紙片を手に持って、一同のところへ戻って来た。
「このとおりだそうです」
帆村と検事とが、左右からその、紙片を引張り合って覗いた。
「指紋ハ四人分有リ。ソノウチ事件関係者ノ指紋ハ、旗田鶴彌、土居三津子、本郷末子ノ三名ノ分。他ノ一名ノ指紋ハ未詳ナリ」
鶴彌の指紋があるのは当然として、土居と女中お末の指紋があるとは、事重大であった。それからもう一人未詳の人物が、この事件に関係したことが新たに判明したのだ。一体それは何者だろう?
缶詰の軽さ
興味ある四種の指紋だ。この缶詰の空缶[#「空缶」は底本では「空詰」]に、四人の指紋がついている。主人鶴彌の指紋がついていることは、何人にも納得がいく。彼はこの缶詰を前にして死んでいたのだから。
しかしこの缶詰を開いたのは、果して彼鶴彌であったかどうか、それはまだ分っていない。またその缶詰が、彼の死に関係があるのかどうかも、まだ分っていないが、帆村探偵はこの缶詰に非常な興味を持ち、とことんまで洗いあげる決心でい
前へ
次へ
全157ページ中126ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング