した。もうだめだ。どうか気をつけてくださいッ!」
久慈の、悲痛《ひつう》なる叫びごえは、そこではたと杜絶《とだ》えた。通信機の前を彼が離れたのであった。
黄いろい煙――怖《おそ》るべし超溶解弾《ちょうようかいだん》
久慈が、ワシントンの監察隊によって襲撃されたのだ!
汎米連邦からは、一人の外国人も余《あま》さず追放されたのに、久慈は、大胆にも、ひそかにワシントンの或る場所に、停《とどま》っていたのである。私の無電通信が、運わるく、警備軍のために発見されてしまった。彼は果して、無事に逃げ終せるであろうか。私は、胸に新たな痛みをおぼえた。
高声器《こうせいき》が、がくがくと、ひどい雑音をたてた。
「おや、まだ、向うのマイクは、生きているな!」
と、私は、思わず目をみはった。
とたんに、高声器の中から、久慈ではない別人の声がとびだした。
「おや、誰もいない。たしかに、この部屋の中に怪しい奴がいたんだが……」
「おかしいなあ。逃げられるわけはないのですがねえ」
と、これは、また別のこえだった。
久慈は、監察隊の眼から、のがれているらしい。どこにひそんでいるのか、そ
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