れともうまく逃げ終せたのか。
「もっと探せ。おや、その書棚《しょだな》のうしろが、おかしいぞ。黄いろい煙が出ている。やっ、くさい!」
「書棚のうしろですか。よろしい、書棚をのけてみましょう」
二人のこえが、遠のいた。
数秒後、二人の驚いたこえが、再び高声器の中に入ってきた。
「あっ、ここから逃げたんだ。鉄筋コンクリートの壁に、こんな大きな穴が開いている。これは、今開けた穴だ。それにしては、この黄いろい煙がへんだ。合点がいかない」
「わかったわかった。もっと奥の方の壁に、穴を開けているんだ。よオし、二人して、とび込もう」
「待て! とびこむのは、あぶない。この穴の開け方は尋常《じんじょう》でない。相手はたいへん強力な利器《りき》をもっているぞ。とびこんではあぶない」
「だが、もう一息というところだ。では、自分が入る!」
「よせ、あぶないぞ」
「なあに、これしきのこと!」
「あっ、とびこんでしまった!」
と、穴の開き方に、疑いをもらしていた一人の監察隊員は、絶望の叫びをあげた。
それから、更に数分後――
「おっ、この煙は何だ。やや彼奴《きゃつ》の声らしい。ただならぬ声だ。さては、や
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