られたか。――おお、そこに足が見える。待て、今、ひっぱり出してやる。うーんと……」
残った隊員は、力を入れて、同僚の足をとって、穴から曳きだす様子!
「ややッこれは……。首が、とけてしまった! やっぱりそうだ。これはたいへん。噂にきいた超溶解弾《ちょうようかいだん》を使っているらしい。これは危い、すぐ本隊へ知らせなくては……」
隊員の声が、引込むと、とたんに、高声器が割れたかと思うほどの、ひどい雑音がとび出し、そのまま高声器は鳴らなくなってしまった。
私は、深い溜息《ためいき》をついた。
(久慈の奴、ついに超溶解弾を使ったか。使ったのはいいが、一切の証拠《しょうこ》を、あそこに残してこなければいいが……)
私は、心配であった。
だが、いくらこっちで、心配をしてみても、向うのことが、どうなるものでもなかった。私は、一切をあきらめるしかなかった。
私は、スイッチを切った。そしてまた階段をのぼって、夜空の下に立った。
美しい夜だ。
星明りばかりで、他に、なんの灯火《あかり》も見えない。視界のうちには、人工的な一切の光が、存在しないのであった。そしてこのクロクロ島のうえでは、自
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