いよ本当に始まるのか」
 私は、眩暈《めまい》に似たものを感じた。いよいよ大戦争だ。そして、待ちに待っていた機会は、ついに来たのである。
「おお、今、知らせが入りました。――ああ、いけません。この通信が、軍の方向探知隊によって発見されたらしいです。うむ、たしかにこの家を狙っているのだ。監察隊が、サイレンを鳴らしつつ、オートバイに乗って、表通りへ練りこんできました。いや、裏通りにも、サイレンが鳴っている。さあ、たいへんだ……」
 私は、おどろいた。心臓がとまったかと思った。ぐずぐずはしていられない。
「おい、久慈、最後の始末をして、すぐ地下道へ逃げろ」
「はい。――おや、地下道もだめです。機銃と毒|瓦斯《ガス》弾をもった監察隊員が、テレビジョンの送像器《そうぞうき》の前を、うろうろしています。ああ、困った。仕方がない、あれを使います」
「あれを使うか。――いよいよ仕方がなくなったときにつかえ。できるなら、使うな」
「そっちは、大丈夫ですか。この調子では、そっちへも、監察隊が、重爆撃機《じゅうばくげきき》にのって、急行するかもしれませんですよ」
「こっちのことは、心配するな」
「あッ、来ま
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