人影は、嘗《かつ》て私が見たことのある彼《か》の奇怪なる服装をしたX大使の姿となり果てたのであった。高圧潜水服に全身を包んだような、大使の不思議なる姿!
「どうだ、わしの姿が見えるだろう」
「舞台の上の大魔術というところだ。入場料をとっているなら、拍手を送りたいところだが、そんな手で、私はごま化されないぞ。これは、君の本当の体ではなくて、幻影にすぎないのだ」
「幻影? 可哀いそうな人間よ。これでも、幻影か」
 X大使は、とつぜん私の方に近づき、私が身をかわそうとするのを先まわりして、やっと、かけごえをして、私の腕を掴んだ。
「うむ、痛い! 骨が、折れる……」
 X大使の握力は、まるで万力機械《まんりききかい》のように、強かった。幻影ではないX大使であった。私は歯を喰いしばって、疼痛《とうつう》にたえた。
「ははは、それ見たことか」
 X大使は、憫笑《びんしょう》すると、やっと手を放した。
「だが、黒馬博士。わしの真意は、君を殺すことではない。いや、それよりも、正直なところ、わしは君と友好的に協力し合いたいのだ。どうだ、承知しないか」
 突然、X大使の言葉は、妥協的になった。
 だが、私
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