した。攻撃機が一つ一つ、濤《なみ》に呑まれてしまったのであった。
「おお、敵機全滅! ばんざーい!」
久慈たちは双手《もろて》をあげて、凱歌《がいか》をあげた。
しかし、私は、別に嬉しくも感じなかった。こんなことは、クロクロ島の偉力の一つとして、なんでもないことだ。だが、汎米連邦の軍用機を撃墜したことによってやがて困難な事態が必ず向うからやってくるであろう。それを考えると、私は、迚《とて》もばんざいを唱える気にはなれなかったのだ。
別れの盃《さかずき》――本国からの呼び出し
クロクロ島にあがる凱歌!
米連の追撃隊は、わが怪力線砲のため、悉《ことごと》くやっつけられてしまった。
「祝盃だ、祝盃だ!」
「なんという、すばらしい戦闘だったろうか。ああ、思いだしても、胸がすく!」
久慈たちは、クロクロ島に備付けの怪力線砲の偉力を、今更《いまさら》のように知って乱舞《らんぶ》のかたちである。
「よかろう。おい、オルガ姫、灘《なだ》の生《き》一本を、倉庫から出してこい」
「はい、はい」
私は、なおも、島の付近の海と空との一面に、油断なき監視の触手を張りおわってのち、ようや
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