私は作戦をのべた。
「それは尤《もっと》もだが、戦闘に時期を失っては、たいへんだぞ」
「もうすこしだ。殿《しんが》りの敵機が、せめてもう二十キロばかり、近くなったときに……」
 といっているうちに、またもオルガ姫の声だ。
「敵の司令機が、無電を打ち始めました」
「えっ、無電を……さては、見つかったか。もう、猶予《ゆうよ》はならん」
 私は、決心すると、オルガ姫を待たずに、配電盤のところへとんでいった。そして、怪力線砲発射の釦《ボタン》を押したのであった。
 とたんに、機械室のエンジンは、ぐぐッと鳴って、ひどい衝撃をうけた。電灯は、今にも消えそうに光力を失った。
 一秒、二秒、三秒!
「ああ、燃える、燃える、燃える……」
 久慈が、テレビジョンの幕面を指して、歓喜の声を放った。
 同じことを、私は、照準鏡《しょうじゅんきょう》の中に認めていた。
 洋上高く、翼を揃えて襲来した六十機の超攻撃機は、一せいに火焔に包まれてしまったのであった。そして雨のように、煙の筋を引きながら、大空から墜落していくところは言語に絶した壮観だった。
 やがて洋上には、真白な水柱《すいちゅう》が奔騰《ほんとう》
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