は重傷を負った。犯人は、その場で逮捕せられたが、彼等は将軍の民族強圧に反対するアラビア人であった。今後、同国内におけるこの種の示威運動は、活溌になるであろうと識者は見ている”
“――汎米連邦における敵国スパイの跳梁《ちょうりょう》は、いよいよ甚《はなは》だしきものがあり、殊に昨日は、ワシントン市と南米方面とは互いに連絡をもつスパイの通信が受信せられ、警備隊は、これの検挙に出動した。ワシントン市におけるスパイの巣窟《そうくつ》はついに壊滅《かいめつ》し、スパイの大半は捕縛《ほばく》せられ、その一部は、自殺または逃走した。南米方面のスパイに対しては、厳重な包囲陣が敷かれて居り、彼等の検挙はもはや時間の問題である”
こうした録音は、いずれも汎米連邦側のものばかりであった。
これに対して、欧弗同盟側では、殆んど、何にも放送していないのが、甚だ奇妙な対照をなしていた。
只一つ、最後に欧弗同盟側の簡単な放送があった。
“――元首ビスマーク将軍は、今、寝所に入ったばかりである。元首は一昨日以来、ベルリンにおいて閲兵《えっぺい》と議会への臨席とで寸暇もなく活動している。因《ちな》みに、ベルリン市
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