っている。
私は、彼女の体を抱き起して、壁に凭《もた》せかけた。それからこんどは、首を拾いあげた。その首を彼女の肩のうえに嵌《は》めてやった。
彼女は、死んだようになって、すこしも動かない。
私は、オルガ姫の胸をあけた。
「ほう、こいつだな」
真空管の一つが、消えていた。
私は、新しい真空管を棚から下ろして、故障の真空管のあとに挿しこんだ。そして姫の胸を元どおりに閉じてやった。
すると、姫は、いきなりぴょこんと立ち上ると、すぐさま、警鈴の鳴る配電盤の前へ走りよったのであった。――私の助手オルガ姫は、もう読者のお察しのとおり、これは本当の人間ではなくて、実は機械で組立てた人造人間であったのである。
人造人間は、助手として、はなはだ好適《こうてき》であった。
命令は、絶対にまちがいなくまもるし、食事をするわけではなく、人間らしいものぐさ[#「ものぐさ」に傍点]もなし、そして部分品をとりかえさえすれば、いくらでも使える。
殊にオルガ姫の端麗《たんれい》さは、ちょっと人間界にも見あたらぬほどだ。私は有名なるミラノの美術館を一週間見て廻って、ようやくオルガ姫の原型《げんけい》を
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