か考えられないのであった。
 怪また怪!
 私は、階段に取り縋《すが》ったまま、大戦慄《だいせんりつ》の末、全身にびっしょり汗をかいた。


   大戦慄《だいせんりつ》――夢かテレビジョンか


 私は、それから小一時間も、なにをする元気もなく、階段の下にうずくまっていた。
 おお、X大使!
 なんという恐ろしい人物にめぐりあったものだろう。これが太古であれば、天狗《てんぐ》さまに出会ったとでも記すところであろう。さすがの私も、すっかり頭の中が混乱してしまった。
 警鈴《けいれい》が、あまりに永いこと鳴り響くので、私はやっと正気《しょうき》づいたのであった。いや、全く、本当の話である。それほど、私はずいぶん永いこと放心の状態にあった。
(警鈴が鳴っているのに、オルガ姫は、なぜ出ないのであろう)
 そんなことを、いくどもくりかえし思っているうちに私は、正気にかえったのであった。
「そうだった。オルガ姫は、壊《こわ》れて、倒れていたっけ」
 私は、起き上って、元の室内へと、とってかえした。
 配電盤の前に、オルガ姫が前のとおりに倒れている。彼女の首は肩のところから離れて、私の机の下へ転が
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