しは、君に代ってこのクロクロ島の実権を握っているようなものだ」
「こいつ、いったな」
「何をいおうと、わしの勝手だ。わしは、わしの欲することを、全部意のままにやるだけのことだ。しかし黒馬博士、わしはまだこのクロクロ島は、ほんの一目見ただけだが、人間|業《わざ》としては、なかなか出来すぎたものだね」
 X大使は、お世辞《せじ》のつもりか、クロクロ島のことをほめあげた。私は、いいがたい口惜《くや》しさに黙りこくってただ唇を噛んだ。
「いずれ、クロクロ島の内部は、ゆるゆる拝見するとして、その前に、君に一つ意見を聞いておきたいことがあるんだが、答えてくれるだろうね」
 X大使の態度は、俄《にわ》かに妥協的《だきょうてき》になってきた。
「答えるかどうかしらんが、早く、それをいってみたまえ」
「うん、いおう。このたび、いよいよ地球の上に捲き起ることとなった第三次世界大戦は、どういう目的とするかね」
 X大使は、ふしぎな話題をとらえて、私に質問を発したのである。私はX大使が普通のテロ行為者《こういしゃ》とはちがって私の生命を断《た》とうとしているのではない様子にほっと胸をなでおろした。
「そんなこ
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