う。
 だがこの怪異な人物は、流暢《りゅうちょう》な日本語を喋るのであった。
「貴様は、誰だ。何者か! 案内もなしに入ってきて、ちゃんと、名乗ったらどうだ」
 私は、重ねて叫んだ。
「そんなに、わしの名が聞きたいか。わしには名前はないのだ。しかしそうはいっても、君は本当にしないだろう。では、気のすむようにX大使と称することにしよう。それでは改めて、御挨拶《ごあいさつ》申し上げよう。吾輩《わがはい》は、X大使である。クロクロ島の酋長《しゅうちょう》黒馬博士《くろうまはかせ》に、恐悦《きょうえつ》を申し上げる!」
 X大使と名乗る怪異な人物は、すこぶる丁重《ていちょう》な挨拶をした。私は、自尊心を傷つけられること、これより甚だしきはなかった。


   X大使の試問《しもん》――地球に資源がなくなったら


「おい、X大使。一体何用あって、無断で、クロクロ島へ闖入《ちんにゅう》したのか。はっきり、わけをいえ」
 私は、肺腑《はいふ》をしぼって呶鳴《どな》りつけた。
「あははは、そう無理をするなといっているのに、君は分らん男だなあ。その体で、わしに手向うことは出来ないではないか。そうすればわ
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