いほど落着き払っていた。
「き、貴様は、何者か!」
「ふふん、わしの姿を見たいというのか。よし、今そっちへ廻って、わしの姿を、見せてあげよう」
 闖入者は、そういうと、また重々しい足を曳きずって私の顔の方へ廻った。
「どうだ、これで、見えるだろうね、わしの姿が……」
 見えた!
 同時に、私は、愕《おどろ》きのあまり、気が遠くなりかけた。
 怪異の姿の人物!
 私は、これまで、そのような怪異な姿の人物を見たことがない。だから、何といって、これを説明してよいか分らない。――全身を高圧潜水服と中世紀時代の鎧《よろい》とをつきまぜたようなもので包んでいる。頭のところには、非常に大きな球状の潜水帽のようなものがある。但《ただ》し、潜水兜《せんすいかぶと》とちがっているのは、その頂天《てっぺん》のところに、赤い一本の触角《しょくかく》のようなものが出ていて、これがたえず、ぷりぷりと厭《いや》な顫動《せんどう》をつづけているのだ。
 球形の兜の中にある顔は、どうしたわけか、すこしも見えない。要するに、すこぶる厳重《げんじゅう》な、そして風変りの潜水服を着ている人間といった方が、早わかりがするであろ
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