を誇っていたクロクロ島に、私の予期しなかった人物が、いつの間にか潜入していたとは、全くおどろいたことである。そんな筈はないのだが……。
だが、足音は、ゆっくりゆっくり、階段を下りてくる。私の体は、昂奮のため、火のように熱くなった。
こっとン、こっとン、こっとン!
ついに、階段下で、その足音は停った。
ついで、扉《ドア》のハンドルが、ぐるっと廻った。
(いよいよ、この室へはいってくるぞ!)
何者かしらないが、はいって来られてはたまらない。私は、扉を内側から抑えようと思って立ち上ろうとした。
だが私は、体の自由を失っていた。
上半身を起そうと思って、床を両手で突っ張ったが、私の肩は、床の上に癒着《ゆちゃく》せられたように動かなかった。
「畜生!」
私は思わずうめいた。うめいても、所詮《しょせん》、だめなものはだめであった。
「あまり、無理なことをしないがいいよ」
とつぜん私の頭の上で、太い声がした。
(あっ、彼奴《あいつ》の声だ。怪しい闖入者《ちんにゅうしゃ》の声だ!)
私は歯をくいしばった。
「無理をしないがいいというのに、君は、分らん男だなあ」
闖入者は、腹立たし
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