れそうに、がんがん鳴りだしたのであった。私は、自信を一度に失ってしまった。
「あっ、苦しい」
私は、オルガ姫を呼ぼうとして、うしろをふりかえった。
「あっ、姫!」
配電盤の前に立っている筈のオルガ姫が、床のうえに、長くなって倒れている。
姫は、いつの間に倒れたのであろう。見ると、姫の首が肩のところから放れて、ころころと私の足許に転がっている。さすがの私も、嘆きのあまり腰をぬかしてしまった。
一体、どうしたというのだろうか。そのとき、階段に、ことんことんと足音が聞えた。私とオルガ姫との二人の外に、誰もいない筈《はず》の艦内に、とつぜん聞える足音の主は、一体何者ぞ!
意外なる闖入者《ちんにゅうしゃ》――触覚《しょくかく》をもった謎の男
私は、夢を見ているのではなかろうかと疑った。
至極《しごく》古い方法であるが、私は、震《ふる》える指先で自分の頬をつねった。
(痛い!)
痛ければ、これは夢ではない。いや、そんなことを試みてみないでも、これが夢でないことは、よく分っていたのだ。
夢でないとすれば――近づくあの足音の主は、誰であろうか?
絶対|不可侵《ふかしん》
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