けで、びっくりするであろう。いや信じないかもしれない。
 だが、昔の人は、動力として、油や電気や瓦斯《ガス》などを使うことしか知らなかったから、こんな大きな潜水艦のことや、その潜水艦のもつ数々の驚嘆すべき性能について、信ずることが出来ないのも無理はない。
 しかし、ちゃんと本艦は存在しているのである!
 潜水艦クロクロ島は、新動力の発見発明から、かくもりっぱに、生れ出でたのである。その新動力というのは、ちょっと他言《たごん》を憚《はばか》るが、要するに、物質を壊して、物質の中に貯わえられている非常に大きなエネルギーを取り出し、これを利用するのである。わが機関部にあるサイクロ・エンジンというのが、それである。
 私は、遂に、余計なお喋りまでしてしまったようである。私は、潜水艦クロクロ島の偉力《いりょく》を、真に天下無敵と信ずる者である。そして、敵艦は遂に、わが艦《ふね》を発見することが出来ないのである。
 ――と、今の今まで思っていたが、どうしたわけか、私は、とつぜん、非常な眩暈《めまい》に襲われた。目の前がまっ暗《くら》になった。そして、はげしい吐瀉《としゃ》が始まった。頭は、今にも割
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