うして島内の有様を記しているのを見ても、それは肯《うなず》かれるであろう。これには、訳があるのであった。
 わがクロクロ島の現在の位置は、先刻《さっき》も、深度計や指針が示していたとおり、水深三十一メートルの海中にあるのだ。その水深は、私が籐椅子を置いていた岩のあるところの水深であって、私やオルガ姫が今いる席のごときは、更にもっと下であることは、いうまでもない。これは、早くいえば、わがクロクロ島は、本当の島にあらずして、島の形をした大きな潜水艦だと思ってもらえばいいのである。
 クロクロ島の、階段上の出入り口を閉めて、そのまま海底に沈降すると、その直下に、丁度クロクロ島が、そのままぴったり嵌《は》まるだけの穴が開いているのだ。
 だからクロクロ島が、ぴったりその穴に入ってしまえば、海底は、真っ平《たい》らになる。つまりこれが水深三十メートル内外の海底ということになって、どこにも異状が発見されないのである。哨戒艦は、しきりに沈下したわがクロクロ島の屋根を打診《だしん》していたことになるのだ。
 クロクロ島は、約十万トンもある大きな潜水艦である。
 十万トンの潜水艦!
 昔の人は、聞いただ
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