水平方向は一万メートル以上は、指度《しど》があやしいのです」
「そうか。じゃ、引続き測量を行え。――司令、お聞きのとおりです。一向《いっこう》予期した海底異状がないそうであります」
と、先任参謀が、情けなさそうなこえを出した。
私は、深度計を見た。
深度計の指針は、ずっと右に傾いて、深度三十一メートル!
「ふふふ、この辺の海底は、三十メートル内外で、殆んど平らであります――か。なるほど、そのような報告では、お気の毒ながら、宝探しは無駄骨《むだぼね》だろうよ。ははは」
私は、腹の底から、笑いがこみ上げてきた。オルガ姫は笑いもせず、あいかわらず、黙々として、配電盤の前に立っていた。
吸音器からは、また話ごえが洩れていた。
「司令、予定された地点は、もう後になってしまいました。そうです、只今、一キロばかり、行き過ぎました」
「そうか。やっぱり駄目か」
と、今度は、司令が、元気のないこえを出した。
「僚艦《りょうかん》からも、かくべつ、ちがった報告はないんだね」
「そうであります。本艦と全く同様の結果を得ております」
「方向探知局の測定に誤差《ごさ》があったのかな。今まで、そんなへ
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