すると、どっちからともなく寄って一緒になってしまう。そしてまた暫くすると、離れる。そのとき、一番艦が、左から右へ移り替る。――艦隊は、ジクザク行進をつづけているのだ。
 私は、この様子を、じっと眺めていたが、艦隊が、わがクロクロ島の方位を、完全におさえていることを知った。一体、どこで、うまく見当をつけられてしまったのであろうか。
「こいつは、油断《ゆだん》がならないぞ!」
 私は、万一の用意をした。
 そのうちに、艦影は、映写幕一杯になった。4と記した赤灯《せきとう》が、ふっと消えて、その隣りの3と書いた赤灯が点いた。映写幕上の艦影は、とたんに小さくなった。
 が、こんどは、艦影は、どんどん大きくなっていった。赤灯は2が点き、遂に1が点いた。そのころ吸音器から、ぼそぼそと、人の話ごえが聞えてきた。
「一番艦の艦橋《かんきょう》のこえを採《と》れ!」
 私は、号令をかけた。
 オルガ姫は、どこの国の機関部員にも負けない敏捷《びんしょう》さでもって、しきりに目盛《めもり》を合わせた。――吸音器からのこえが、急に大きく、明瞭《めいりょう》になってきた。
「司令、たしかにこの方位にちがいないの
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