うばくげきき》に乗って急行するかもしれませんよ!)
 という意味のことを云った。今、近づいてくるのは、哨戒艦であって、重爆撃機ではないから、話はちとちがう。といって、もちろん、安心はならない。
「二万メートル!」
 と、オルガ姫が叫んだ。私は、哨戒艦との距離二万メートルの声を待っていたのだ。
「おお、そうか。では――テレビジョン、点《つ》け! 吸音器《きゅうおんき》開け!」
 私は、命令した。
 壁間《へきかん》に、ぽッと四角な窓があいた。窓ではない、テレビジョンの映写幕である。静かな海面、すこし弯曲《わんきょく》した水平線、そして、そのうえに、ぽつぽつと浮かぶ三つの黒点――それこそ、近づく三隻の哨戒艦であった。このテレビジョンは、赤外線を受けているので、映写された夜景は、まるで昼間の景色と同様に明るく見えるのだった。
 その横では、吸音器が、はたらきだした。ざざざーッと、いそがしそうに鳴るのは、全速力の哨戒艦が、後へ曳《ひ》く波浪《はろう》のざわめきであろう。
 映写幕のうえの艦影《かんえい》は、刻々に大きくなってくる。
 その三点の黒影は、ぽつぽつぽつと並んでいたと思うと、しばらく
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