りてきたと思うと、彼女はその足ですぐ配電盤のところへ、とんでいった。
 複雑なスイッチが、つぎつぎに入れられた。赤や白や緑やの、色とりどりのパイロット・ランプが、点いたり消えたりした。防音壁をとおして、隣室の機械室に廻っている廻転機のスピード・アップ音が、かすかに聞える。
 私たちの体は、なんの衝動《しょうどう》も感じなかったけれど、深度計《しんどけい》の指針は、ぐんぐん右へ廻りだした。
 室内の空気の臭《にお》いが、すっかりちがってきた、薬品くさい。もちろん、それは濾過層《ろかそう》を一杯にうずめている薬品の臭いであった。
「三隻よりなる哨戒艦隊、東四十度、三万メートル!」
 オルガ姫は、すきとおる声で、近づく艦艇を測量した結果を、報告した。
「どこの国の艦《ふね》だか分らないか」
「艦籍不明《かんせきふめい》!」
 と、オルガ姫は、すぐに応えた。
「艦籍不明か。どうせ汎米連邦の艦隊だろうが、なんの用があって、こっちへ出動したのかな」
 まさか、このクロクロ島が見つかったためではあるまい。
 だが、先刻、久慈は、私に向って警告した。
(この調子では、そっちへも、監察隊が重爆撃機《じゅ
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