こっちを見ているではないか。
「おお、黒馬博士、待っていたぞ」
X大使の声は、いつもとはちがって、やや上《うわ》ずっている。私は、もう観念した。そして階段を下りきると、X大使の前へ、つかつかと歩みよった。
「X大使。まだ私に、用があるのかね」
「おお、用事というのは、外でもない、わしは、これから自分の国へ帰ろうと思うのだ。君には世話になったから、一言《ひとこと》挨拶《あいさつ》をしていきたかったのだ」
「挨拶だって?」
「そうだ。鬼塚元帥から君へあてた電文の内容は、わしも知っているよ」
「そんな筈はない」
「なあに、わしは、オルガ姫が読んでいるのを、潜水艇の外から聞いていたのだ。だが、そんなことは、どっちだっていい。とにかく、地球へ派遣せられたわしの任務も、一段落となったから、これから帰途《きと》につくのだ。米連艦隊と欧弗同盟空軍とを闘わせたのは、地球に内乱を起させ、自壊作用《じかいさよう》を生じさせ、大いに消耗《しょうもう》させたつもりだったが、日本が、その誇るべき科学力をもって、四次元振動の反撥装置をもったベトンの中に隠れてしまったことには、さすがのわしも、すこしも気がつかなかっ
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