敵意がはっきりしたようだ。これはますますやるぞ」
 X大使は、じっと直立《ちょくりつ》したまま、うわごとのように観戦光景を喋った。
「すると、不測《ふそく》の戦闘が起ったというわけですね」
「そうじゃ。これが、開戦のきっかけじゃ。たとえ間違いから起っても、これだけの戦闘が開始されると、ついに全面的大戦争に追いこまれる筈なんだ。……いや、米連主力艦隊が苦戦だ。あっけなくやっつけられては、こっちの計算に反する。どりゃ、ちょっと、向うへいって来る」
「また、向うへいくのかね、X大使」
「そうだ。わしは、これから出掛ける。じゃあ失敬。そのうちに、また会おうよ」
「うむ。まあ、気をつけていきたまえ」
「なに、気をつけていけって。あははは。人間じゃあるまいし、心配することなんか、何もありはしないよ。あははは」
 X大使は、奇怪なる放言をのこして、かき消すようにその姿は見えなくなった。
“人間じゃない!”
 かねて私は、X大使の身の上に、疑いをもっていた。彼は人間ではなさそうだと思っていたが、今彼は、わざとそういったのか、それとも不用意にいったかはしらないが、ともかく、
“人間じゃあるまいし……”と
前へ 次へ
全156ページ中127ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング