、すっかり元気をなくしてしまった。彼はどうしていいかわからないという風に、身悶《みもだ》えしていたが、やがて、やっと決心がついたという顔になって、
「では、こうしましょう。欧弗同盟軍へ砲を向けることは出来ないが、欧弗同盟軍に対し、戦闘を中止するように勧告しましょう。それで、日本も大東亜共栄圏も安泰です。このへんを妥協点として、我慢していただきたい」
すると、X大使は、急に狼狽したようなこえになって、
“それは賛成できない。平和になってしまうのでは、仕様がない。あくまで、欧弗同盟軍と闘ってもらわないと困る。闘わないというのなら、こっちにも覚悟がある”
「それは無理というものだ。余には、欧弗同盟軍を砲撃せよと命令する権限がない。ワイベルト大統領にいっていただきたい」
“おいおい、呑気《のんき》なことをいっては困る。貴官の話を聞いていると、まるで、ワシントンの海軍省の応接室で、貴官の話を承っているようじゃないか。現在の事態は、そんなものではないぞ。おいピース提督、貴官及び貴艦隊は、いま私の掌中ににぎられていることを知らないのか”
「それは分っている。しかし余には、そんなことはできない」
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