X大使だから……。
私は観念して、ピース提督の前に立ち、彼がどうするかを凝視《ぎょうし》した。
ところが、提督は思いの外、周章狼狽《しゅうしょうろうばい》しているのだった。彼は、後ろの壁に、ぴったりと体をつけ、恐怖の眼《ま》なざしをもって、私を見据えた。
「おお黒馬博士。余は、博士に謝罪をするものである」
提督は、私の顔を見て、黒馬博士だと悟ったのだ――そんなに愕かれる程の私でもないが……。
「おお黒馬博士。余は博士が、四次元の世界に跳躍せられる力があるとは、想像していなかった。先程からの非礼をことごとく詫びる。そして……」
提督は、ひとりで喋った。
「そして、余は、黒馬博士と識るを得たことを悦ぶ者である。そこで博士よ。余は突然ながら、折入って博士に相談したいことがある。その内容を、はっきりというならば、博士よ、余にその四次元世界への跳躍術をコーチしてくださるまいか。そのために、余はアメリカに有する七千万ドルの財産を、すべて博士に贈ることを、ここに誓う者である。どうです。さあ、イエスと返事をしてください」
提督は、勘ちがいをしている。X大使にねだるべきことを、私に訴えているの
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