手荒なことはしたくないがクロクロ島の秘密を知られては、面倒《めんどう》だ。さあ、君たちいそいで、そこの階段を下りたまえ」
私は、脱出してきた久慈の一行を、いそいで下に下ろした。
そして私は、籐椅子をもって、下に下りていった。
「潜水始め、深度十メートル」
私は、オルガ姫に、命令を伝えた。
姫はあざやかに、並ぶスイッチを間違いなく入れた。
掩蓋《えんがい》兼防水扉は、直ちに、閉った。そして深度計の指針は、もう右へ傾き出した。
壁のテレビジョンの幕面には、すでに、追跡中の超攻撃機編隊が、うつっている。その画面の左右には、しきりに数字が消えては、また現われた。距離と高度とが、忙しく、示されているのであった。
久慈は、心配げに、私の傍に、ぴったり体をつけていた。
「怪力線砲で、やっつけるだろうね。もう撃ってもいい頃じゃないか。ぐずぐずしていると、間に合わない」
と、久慈は、やきもきしている。
「いや、まだ早い。こいつらを一挙に墜落させないと、都合がわるいのだ。もし一機でも二機でも残っていると本隊へ連絡してこの戦闘情況を報告するだろうから、それじゃ、こっちの秘密が分ってしまう」
私は作戦をのべた。
「それは尤《もっと》もだが、戦闘に時期を失っては、たいへんだぞ」
「もうすこしだ。殿《しんが》りの敵機が、せめてもう二十キロばかり、近くなったときに……」
といっているうちに、またもオルガ姫の声だ。
「敵の司令機が、無電を打ち始めました」
「えっ、無電を……さては、見つかったか。もう、猶予《ゆうよ》はならん」
私は、決心すると、オルガ姫を待たずに、配電盤のところへとんでいった。そして、怪力線砲発射の釦《ボタン》を押したのであった。
とたんに、機械室のエンジンは、ぐぐッと鳴って、ひどい衝撃をうけた。電灯は、今にも消えそうに光力を失った。
一秒、二秒、三秒!
「ああ、燃える、燃える、燃える……」
久慈が、テレビジョンの幕面を指して、歓喜の声を放った。
同じことを、私は、照準鏡《しょうじゅんきょう》の中に認めていた。
洋上高く、翼を揃えて襲来した六十機の超攻撃機は、一せいに火焔に包まれてしまったのであった。そして雨のように、煙の筋を引きながら、大空から墜落していくところは言語に絶した壮観だった。
やがて洋上には、真白な水柱《すいちゅう》が奔騰《ほんとう》
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