もあった。最も自信のある手真似通信法を書いて来た者もあった。そうかと思うと、百人の美女を先方へ送って、まず懐柔すべしという説もあった。地球上の御馳走をうんと送れというのもあった。が、どれもこれも靴を隔てて痒きを掻くの流を出でなかった。
 その一方において、怪人集団を即時殲[#「殲」の旁は底本では「繊」の旁に同じ形、89−上段−9]滅すべしとの強硬意見が日に増して有力になって行った。テレビジョン送影機を雨下する代りに、なぜ原子爆弾の雨をかの怪人集団の蟠居地域へ送らなかったのかと非難する者さえあった。
 とにかく、至急何事かを怪人集団に対してなさねば済まないことが、誰にも分った。だが、その実行方法の適切なるものが知られないために、世界の人々は日毎に焦燥と憂鬱の度を加えていったのである。それと共に、世界連合会議への[#「への」は底本では「の」、89−上段−18]非難は厳しさを増していった。
 その結果、遂に世界連合会議は具体的に行動を始めることを発表した。それは実にワーナー博士の遭難から二週間を経た後のことであった。
 何を始めたかというと、まずグリーンランドの海岸から、水中を伝わる超音波を
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