笑いながら、彼を奥の部屋へ引張っていった。そこは通信機器の修理室らしく、ごたごたとフレームが置かれ、リノリウムの床の上には電纜《ケーブル》や工具類が散らばっていた。
 局長は、そのフレームの一つの前まで来ると立停って、指した。
「この機械は何だか分るかね」
「いや、分らないね。僕はさっぱりだ、この方面のことは……」
「これはテレビジョンの受影機なんだ。航海中アメリカやイギリスのテレビジョンを受けようと思って、僕が試作中のものなんだ」
「テレビジョン? 遠方の光景を映画のようにうつして見える器械のことだったね」
「そのとおり。この映写幕にうつるのさ」
 局長ブラウンは、ぴちんと音をさせて、スイッチを入れた。するとしばらくしてその映写幕が光り出して、その上に、波のような模様が忙しく流れだした。
「今、この映写幕の上に映像がぴったりと停るだろうが、そうしたら君は、そこにうつっているものが何であるか、いい当ててみたまえ」
 局長はそういうと、フレームの横に中腰になって、目盛盤をしずかにうごかしていった。ドレゴの目に、沢山の縞目がゆるやかになって来て、やがて映像が幕の上にぴったりと固定するのが分
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