だ」
「ふうん」と一人の記者が呻《うな》った。
「たしかにそこに一つの性格が認められるね、この発信者のだ……。そこでロンドン局を呼出して、追及してみたよ。するとその電信を受付けた局員が出て来たが、結局それはテームズ河口の浮標Dの十一号から依頼されたものだという……」
「浮標が電信を依頼するということがあるだろうか」
「浮標そのものが依頼したわけじゃない。その浮標に繋留していた船から依頼されたわけだ。その浮標とロンドン局とは、やはり電纜《ケーブル》で連結されているんだ。ところでDの十一号までは、つきとめたが、残念なことに、その浮標に当時繋留していた船の名が分らない。そこでこの調査も一応終りさ」
「ふうん。その浮標に繋留した船がありながらその船名が分らないというのはおかしいね。必ず分らなければならない筈だ」
「ところが、港湾局にも記載がないのだ。つまりその日D十一号浮標に繋留した船はないと言明している」
「それはいよいよおかしい。ちゃんと電信依頼がロンドン局へ届いている。そんなら繋留船が存在しなければならない」
「そこに何か曰くがありとしなければならないだろうな。……とにかくさ、要するにロ
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