されていた。
平和的交渉論は、一応誰しも賛同するところであったが、この主張の弱点は、その具体的手段が見付からないことだった。だから日と共に防衛殲滅論の方が優勢になっていった。しかしながら、この防衛殲滅論も百パーセント決定的勝利が得られるとはいい切れないところに、やはり弱点があった。
それは、果して大西洋海底の怪人集団が、現代の最強武器である原子爆弾によって完全に壊滅するものであろうかという危惧、それからもう一つ、たとえ現在蟠居する彼等を殲滅し得たとするも、彼等の後続部隊が後になって大挙襲来するのではなかろうか。この可能性は十分にあるものと思われる。そのときに至って、わが地球兵団は果して宇宙の強敵に対して必ず勝利を収めるだけの自信があるだろうか。またそれまでにわれらは十分の宇宙戦争の準備をすることが出来るであろうか。もし勝利に自信がなく、準備も間に合わないとすれば、今日大西洋海底に蟠居する彼等の前衛集団を攻撃することによって、無用不利の刺戟を彼等の本国に与えることは策の上々たるものではないというものであった。
このへんから会議は、所謂《いわゆる》小田原評定的な調子を露呈するに至った
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