なくとも何とか意志を通ずる方法もあるし、相手の気持も能力も信頼度も、まず大体察知し得られる。ところが今の場合のように、これまで全然|交際《まじわ》ったことのない高等生物に対するということになると、どうしてよいか、どこから始めていいか、さっぱり、見当がつかないのだ。
 時刻が移るに従って、事態はいよいよ深刻化していった。それは第二報が警告している内容の如何に重大なるかが世界各国にぼつぼつ分りかけて来たからであろう。
 それでも世界の一部には懐疑病に取憑れた政治家があって、その報道の荒唐無稽なること、それが某国のためにする神経的威嚇であるとして攻撃を加えた。しかしこういう人達は、恐らく頭上に原子爆弾が落ちても、身は真黒焦になってしまった後でも、原子爆弾の威力を信ずるとはいわないひねくれ者一派にちがいなかった。そういう一派はいつの世にも必ず棲息しているものだ。
 世界連合の臨時緊急会議がロンドンで開催せられた。これはいわずとしれた、大西洋海底の怪人集団に対するわが全世界の態度と処置を議するためのものだった。
 その会議は、なかなか纏《まとま》らなかった。それは怪人集団に対する全世界の歩調一致
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