ィッチ、ビスケット、チーズ、塩肉、野菜スープの缶詰、それから数種の飲物だった。ガロはいいつけられたものを地下物置から取出すと、大きな盆の上に山盛にして、ドレゴの部屋へ持って来た。
「若旦那さま。持参いたしました。これでよろしゅうございますか」
「うん、待てよ、忘れものがあってはたいへんだ」
登山の身支度半ばのドレゴは、ガロの持っている盆のまわりをまわって必要品を調べる。ガロはドレゴの登山服に目を留め、
「若旦那さま、ヘルナー山にお登りかと存じますが、御承知のとおり只今の気候は登山によろしくございませんで……」
「爺や、危険を顧みている隙《ひま》はないのだよ。切迫した事情があるんだ。そしてそれは僕を一躍世界の寵児にしてくれるかもしれないのだ。お前が僕だったら、こんな千載一遇の機会をのがすかね」
「はい。それは……しかし一体あの雪崩《なだれ》の峰に如何たる幸運が隠されているのでございますか。爺やは合点が参りませぬ」
「お前だって、一目見れば分るよ。窓のところへ行ってヘルナーの峰を見てごらん。疑問はたちどころに氷解するだろう」
「何と仰《おお》せられます」
爺やは窓のところへ歩みよったが
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