、地球にもっと近い月と関係をもちそうなものではありませんか」
「ばかをいっちゃァいかん、月には、生物が棲んでいるかい。問題にならん」
「じゃあ火星には生物が棲んでいるのですか」
 僕はここぞと切りこんだ。
 博士は、うーむと呻った。手応えがあったのだ。僕の胸は早鐘のようにおどる。
「いかにも、火星には生物が棲んでいる。生物が棲んでいるから文化もあるんじゃ。では一つだけ君に話をしよう。さっき君がいいだした火星の運河といわれる黒い筋の話だが、わしの研究によると、あれは原動力輸送路だ。これに似たものをわれわれ地球上に求めると、送電線とかガス鉄管とかいったものがそれにあたる。だが火星では、電気やガスを原動力としてはいない。そんなものよりも幾億倍も大きな或る力を原動力としている。どうだ、わかるかな」
 轟博士は、奇想天外なことをいう。電気やガスなどの幾億倍も強大な原動力などというものがこの宇宙に存在しうるのであろうか。僕はあまり意外で、返事をしかねていると博士はまた口を開いた。
「あの原動力輸送路が、網状をなしているのは、なぜだとおもうか。あれは原動力を、必要によっていつでも一つところへ集めるた
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